父から娘への事業承継を機に事業規模の拡大に成功
事業拡大の構想はあるものの、事業主の高齢化や適した土地がないことが原因で一度は計画を断念。 しかし娘への事業継承により、資金を調達し地域のコミュニティサロンとする新コンセプトで事業拡大を実現した。
代表者:田所 慈(たどころ めぐみ)
住 所:兵庫県神戸市灘区六甲山町東山の内西谷1-248
相談者である前事業主の藤田氏は事業拡大を考えていたが、「こもれびの森」がある地域は市街化調整区域のため建物の新築・増築ができなかった。別の地区で農業体験などを楽しむ施設開設に適した土地を見つけたが、高齢かつ後継者のいない個人事業者である相談者は資金調達が難しく、希望する土地を入手できずにいた。そこで補助金活用の方法を知りたいと考え、公的機関の広報誌で当拠点を見つけて相談に訪れた。
当拠点のチーフコーディネーターを中心に、複数のコーディネーターがチームになって多面的な支援を開始。相談者は、別の地区での新施設展開を補助金で賄えないかと考えて来訪したが、この計画に適した補助金制度がないこともあり、当初の方向は断念した。
一方で、「こもれびの森」の隣接地購入の機会があったことから、これを事業拡大に結び付けられないか相談者と検討し、今後の取組みで重要な要素を以下のように整理した。
①建築物が建てられない市街化調整区域の中で売上増に向けた具体策を策定する
②個人と事業の境界線をはっきりするために法人化する
③長期の事業継続を可能とするため代表者に相談者の娘(田所代表)が就任し、事業承継の意図を明確にする
④飲食店経験を活かし、地域に根差したコミュニティサロンとしての位置付けを目指す後継者の構想を具体化する。
これらの要素を踏まえて事業計画を策定し、新法人での資金調達を目指すことが最善だと判断した。
相談者の娘である新代表は「森のリビング」というコンセプトをあたためていた。建物は建てず、2,000㎡の敷地を利用し、バーベキュー、ライブイベント、クリスマスリースのハンドメイド企画など、各種イベントで集客し、地域のコミュニティサロンとする構想である。
当拠点は、この構想の実現に向けて、施設で提供するサービスがどのように数字に結びつくかを積み上げ、過去の経緯から将来像まで、説明する資料を作成するよう助言した。
相談者は娘とともに、作成した事業計画書を当拠点の助言を受けながらブラッシュアップし、金融機関との交渉に入った。
法人化の諸手続きを終え、娘が代表となって事業計画を策定したことが評価され、金融機関からの借入れが実現した。
さらに法人化による好影響として、近隣の老人福祉施設との契約が成立した。これまでも、施設内に漂う木の香りを好んで、「こもれびの森」に個人で来店する高齢者はいたが、施設との法人取引が実現したことで、定期的にまとまった集客も出来るようになった。
相談者は、「拠点への相談を通して娘への事業承継を実現できたことだけでなく、新代表となった娘にとっては、拠点との関わりは今後も支えとなっていくだろうと期待している」と話している。新代表も「拠点の存在はとても心強い。これからも、経営課題の相談など、利用していきたい」と語った。