部屋食から会場食への変更とニーズに合わせた宿泊プランの設定で大幅な業務改善を実現
昭和39年、日本三景の一つとして知られる宮島の対岸に湧出した「宮浜温泉」に、最初の旅館として開業。全10室2階建ての純和風旅館で、ラドン含有率の高い温泉と、地元名産のカキやアナゴ料理を部屋出しする宿として、経営を続けてきた。宮島はもとより、岩国など周辺の他の観光地を訪れる旅行客にも、利用されている。
代表者:代表取締役 神埼 宏
住 所:〒739-0454 広島県廿日市市宮浜温泉1- 21-42
連絡先:(0829)55-0030
部屋への案内や料理運びなど、和風旅館の接客に不可欠な仲居さんは、多くが高齢でいつ退職しても不思議ではない状態。将来への不安を解消するため、地元の商工会を通じて当拠点に相談に訪れた。
地元の情報誌に「仲居さん募集」という広告を出しても全く応募がない。仲居さんという仕事は若い人に敬遠されるイメージがあり、また地元に大きなショッピングセンターがオープンしたため働き手が不足。さらに宮浜温泉にも新オープンのホテルが増え、人材の取り合い状態になっている。三代目となる社長と妻、そして後継者である息子の3人で将来の組織体制を考えるも、その基本となる人材確保の見込みがまったく立たず、不安が増していた。
仲居さんの多くは70代。木造2階建ての日本旅館は階段も多く、エレベーターもないので、料理の部屋出しの際、仲居さんたちに大きな負担を強いていた。人員不足も深刻で、満館の日のオペレーションは限界寸前。その悩みを地元大野町の商工会に伝えたところ、当拠点を紹介され、人手不足に対する良いアドバイスはないかと相談に訪れた。
相談を受けた当拠点の正岡稔COは、求人難の中、仲居さんの募集を続けても新規雇用は難しいと判断。現在のスタッフで接客が可能な体制づくり、業務プロセスの改善が必要ではないかと考えた。そこで、顧客データを集めて分析を行い、ニーズを把握することから解決の糸口を探った。
まずは旅館かんざきの近年の顧客属性を知るために、社長と奥さん、そして息子さんと一緒に宿泊予約サイトの顧客データを調べた。すると意外に若年層の宿泊客が多いことが判明。これを基に、仲居さんの負担を減らすことができる会場食への変更を提案。そして、新たな宿泊プランの検討も提案した。
宴会場に使っていた畳敷きの大広間をカーペット敷きの食事会場に改装し、朝夕の食事を集約的に提供することにした。今まで階段を上り下りし、各客室に料理を運んでいた仲居さんの負担が軽減された。
約6割の顧客が30代以下というデータを受け、新しく素泊まりプランも設定した。カジュアルに旅をする層やバックパッカー、外国人の受け入れも視野に入れ、費用を抑えて「泊まりやすさ」をアピール。それとともに宴会プランも充実させ、宿全体の稼働率を維持できるようにした。
平成30年の初夏からデータ分析を始め、それを基に部屋食から会場食へと変更したことで、仲居さんの負担を大幅に軽減することができた。また宿泊プランを見直すことで平日の落ち込みが回復し、宴会プランを利用するシニア層なども徐々に増えてきた。平成30年7月に発生した西日本豪雨による客足の落ち込みもあったが、現在は回復傾向にある。
地元大野町の商工会にもお手伝いいただき、ネット予約のデータを中心に旅館かんざきの顧客ニーズを探りました。分析によると20代・30代のカップルとグループ客が6割を占めており、必ずしも部屋で高級な日本料理を求めてはおらず、どちらかといえばコストパフォーマンスを重視した顧客像が見えてきました。
提案内容はデータで裏付けし、安心して取り組めるようにこれにより、部屋食から会場食に変えても影響が少ないと判断。仲居さんの負担や人数を減らす体制ができ、また素泊まりプランなど食事なしの設定も提案しました。いずれの提案も顧客データの分析結果から裏付けを取り、また地元商工会の協力も得て、相談者の安心感が得られるように留意しました。
仲居さん不足の現実もあって、いろいろ新しい体制を模索していましたが具体的なアイデアはなく、今回のよろず支援拠点からのご提案で、今後の方向性が見えてきました。特に顧客データの裏付けが大きな後押しになりました。
今までは自分たちの宿の現状について、考えたことがありませんでした。ちょうど息子が戻ってきたタイミングで今回のお話があり、あらためて皆で客観的に話すことができ、とても良かったと感じました。そして、これからの意欲も湧いてきました。
2年前に戻ったときは、うまくいっているのか、いないのかさえ分かりませんでした。今回、具体的な数字を見て、問題のあるところを解消していき