卸売業から小売業へ 業態転換して事業を再生
大手取引先を相手にした大量仕入・大量販売の卸売から脱却し、小売店での販売展開へ。 人と人とのつながりを重視して着実に飲食店などの取引先を開拓し、売上拡大を実現した。
代表者:池村 真一郎(いけむら しんいちろう)
住 所:岐阜県関市下有知4062
相談者は食品卸売商社の社長。北海道産のカニや、中国から輸入した冷凍食材を商社や問屋向けに販売していた。平成19・20年の中国餃子事件、東日本大震災などの影響で、大手取引先に販売を依存する事業モデルが崩れ、経営難に陥っていた。弁護士から当拠点を紹介され、岐阜市立中央図書館のビジネスチャレンジ支援相談窓口(当拠点のサテライト)に相談に訪れた。
担当コーディネーターは相談者が、限られた数の大口顧客に売上げを頼っていたために経営が不安定になったことを指摘。さらに、売上高の増大に気を取られ、大手取引先に対して与信管理(取引額の上限設定等)もせず盲目的に仕入高を増やすなどリスク管理が不十分だったことも判明した。また、最終消費者と直接つながっていないために需要の見込みが立てづらく、不安定であることも弱点だった。
そこで、キャッシュフローを安定させ、経営基盤を固めるために、主だった中間卸売業者問屋との取引から、現金商売が推進しやすい小売店へと取引の軸足を移すことの重要性を伝えた。そのためには、他社メーカーの仕入品の取扱いだけではなく、同社ならではの商品の販売も必要だと判断。大手量販店での取扱い品とは一線を画した商品を取扱い、消費者により近い位置での販売をすることで、より高い価格帯での商品展開を図って売上げを安定させることが先決だと分析した。
既存の商品、販路、人脈の中で、新たな事業方針にマッチするものを取捨選択するよう提案。既存仕入先であった大手業者は中国など遠方が多く、出張経費がかさんで利益を圧迫していたため、積極的な仕入拡大は控えた。販売先については小売業態の中から良質な顧客、リピート受注が見込める飲食店等との関係を一つひとつ丁寧に構築していくことを解決策として助言した。
相談者は、所属するロータリークラブや経営者団体の人脈を活用し、消費者の顔が直接見え、なおかつ自社ブランドのアピールが可能な売り場を確保。関市の道の駅「平成」、美濃市の「にわか茶屋」での実演販売、高級食材を扱う地元スーパーとの取引を開拓した。相談者自らも実演販売の店頭に立ち、直接来店客と対話し、お客様の声を把握しながら事業展開を図る好循環が生まれた。
かつては外部からの食材仕入と卸売りの業態だったが、相談後、可能な限り自社オリジナル商品としてのプロモーションを開始。より高い単価設定が可能となり、収益性も高くなった。
また、夕方のニュース番組で自社商品が紹介されたことで、大勢の観光客や地元住民が来店し、購入に結びついた。
「長年卸売業のみに専念していたが、当拠点への相談を通して、消費者と直接関わることで市場のニーズを直に感じ取ることもできた」と相談者。その結果、売上げの予測も立てやすくなり経営が好転することを実感。自ら店頭に立つことで、小売店での認知も高まり、経営が改善されるうちに、本来専門としていた業務用対象となる大量注文も戻ってきた。今後は、小売、業務用の二つを事業の両輪として経営を展開していく予定だ。