意識改革と新商品開発で昆布離れを打開し売上増
福井市内で昆布卸・小売業を営む有限会社中西昆布。近年の食生活の変化で、若者の昆布離れが進んでいるという課題に悩まされていた。悲観的な発想に囚われていたが、意識を変えることから昆布離れ打開のきっかけをつかむ。
代表者:中西 伸治(なかにし しんじ)
住 所:福井県福井市経田1-1313
連絡先:0776-22-6137
「中西昆布」は昭和7年に初代が京都での修行を経て福井市内に創業した。相談者はその三代目。近年、食生活の洋風化や核家族化が進み、消費者の昆布離れが加速しており、相談者は、マーケット縮小に大きな不安を抱いていた。そんな折、取引のある金融機関の支店長から当拠点を紹介され、アドバイスを求めて来訪した。
最初の来訪時は、「今の若い人たちの昆布離れについて、時代の流れで仕方ない」と、前向きな発言がほとんどなかった。担当したコーディネーターは、まずは代表のマイナス思考を変えるべく、今や昆布は世界のシェフたちの間で、最高級の食材として扱われているという事実を指摘し、昆布離れした若い人たちが、また昆布に戻ってくる可能性を示唆した。そのためには、一般的に手間がかかると思われている昆布でダシを取ることは意外に手軽であることや、自然食品である昆布の素晴らしさを世の中に伝えていくことが大切だと説得。こうしたポジティブな話の中で、まずは相談者の意識改革を進めていった。
若い人たちに日常生活のなかで昆布を使ってもらい、良さをわかってもらうことを目指し、昆布料理教室、昆布だしキットの商品開発、SNSやホームページを使ったレシピの発信、だしソムリエによる昆布についてのワークショップなどを行うことを提案した。
これを受けて相談者は早速、だしキットの試作品を開発。1リットルの水に、一定量の昆布と鰹節を入れて、一晩置くだけで、翌朝にはダシができているという代物だ。
試作後、福井市内にある護国神社で定期的に行っている、赤ちゃんのためのお参りの日に合わせて、同社がだしキット300セットを無料配布したところ、評判となり、お母さん方からの問合わせが増加。というのも実は、お参りの日に合わせて相談者が元々提供していたお粥の昆布ダシの味がかねてより評判になっていたのだ。これをきっかけにだしキットの商品化と発売に踏み切った。
だしキットの開発・発売について、当拠点からの提案で記者発表の開催が決定した。その際、だしキットは『天然だし入門セット』と命名。パッケージデザインもアドバイスした結果、全国紙や地方紙、専門誌やラジオなどいくつものメディアに取り上げられると、在庫商品が数時間で完売。その後も生産が追い付かない状況が続き、ネットでの注文も増えた。店舗に来店する新規のお客様も増加。マーケットは縮小の一途と思い込んでいた相談者は、当拠点に相談することによって「マーケットはまだまだある」ことを実感し、視野を広げ前向きに取り組めるようになったと語った。