デザインをキーにした最高級の商品開発で売上拡大
数年前から出汁パック「黄金のだし」を国内・海外に向け販売し、ある程度の販路を開拓していた相談者。これをさらに伸ばしたいと考えたが先行するメーカーの存在があった。ここから、最高ランクの商品を海外富裕層向けに開発するという挑戦が始まった。
相談者は、数年前から「黄金のだし」というネーミングで、粉末の昆布と鰹節などをブレンドした出汁を、紙パックで個包装した出汁パックを販売。国内・海外に向けた商品の販売に取り組んでおり、ある程度の販路開拓は実現。しかし、これを更に伸ばしていく上で取り組むべき課題を整理したいとの想いで当拠点に来訪相談に至った。
担当したコーディネーター(以下CO)は、初回の相談で会社の事業概要を確認し、国内販売、海外販売、それぞれの問題点についてヒアリングを行った。数年前から販売している「黄金のだし」は、減塩タイプのものや徳用パック、野菜だけの出汁パックなどを開発して市場に投入。スーパーなどで販売される大手メーカーが主体の廉価品市場と高価格品市場に二分される出汁パック市場で、当社は高価格品市場に参入している。この市場は、全国の百貨店を中心に直営店を展開している日本のメーカーが、消費者の認知度では圧倒的に高く、この牙城を崩すのは容易ではない。これは海外においても同様の状況であった。
先行ブランドの強みは、市場展開、海外展開を先取りして行っただけでなく、無添加や食塩不使用の製品である、という点にもある。同社の製品には、無添加でかつ食塩不使用のものがなく、香港やシンガポールなどの富裕層向け商品としては競争力が不足していたのだ。
また、パッケージデザインやネーミングも洗練されたイメージが不足しており、日系の百貨店での取扱はあるものの、仕入商品の種類が限られており、大きな売場の獲得にはつながっていなかった。
当拠点のCOは、商品の見直しと販路の選定の二つの側面で解決策を提示。
無添加、食塩不使用という点については国内よりも海外の富裕層が強く反応することが分かっていたため、海外の富裕層向けの商品として開発を行い、タイミングを見て国内にも投入するという考え方をとるべきであると提言。最高ランクの商品をつくることをアドバイスした。
商品パッケージのデザイン、ネーミングについて、従来は商品の表面にありとあらゆる情報を盛り込んでおかないと消費者に商品を選んでもらえない、という感覚が強く、あらゆる情報を書き込んでいた。これを根本的に変更し必要最小限の情報に絞り込み、スタイリッシュな仕上がりにすることを提案した。これを受け相談者は、材料の品質や構成、味、全ての面で満足できるレベルの商品を短期間で開発。パッケージやネーミングに関しては、海外・国内両方使うものとして当拠点から提案した「心」一文字を使うことを決断した。
最高級の原価をかけている商品であることから、在庫を持つリスクを回避するとともに、市場の需要を喚起するためにも、販売先を海外と大市場である東京と敦賀本社のみに限定することを提案した。また、情報発信として県内メディアに対する記者発表を提案。プレスリリースの作り方と当日までの記者との調整などもCOが中心となっておこなった。
記者発表の2週間後に行われた香港での展示会において持参した製品が完売(約24万円相当)。これまでも取引のあった香港そごうから、新商品の発注と共にこれまで取り扱ってくれなかった他の商品も全て発注をもらった。
関東圏の小売店から予想を超える発注があり、発売3ヶ月で120万円弱の売上げを達成した。これまでの商品も市場投入後の立ち上がりが遅く、それなりの売上規模に達するまでは時間がかかっているが、比較的順調に立ち上がった。