社長1人の事業展開 課題を明確にし創業以来の黒字化に成功
建設資材卸業を営む相談者。当初は、新商品開発の相談が目的であったが、従業員の退職や売上げの減少が続き経営改善に着手することに。相談者1名で事業を展開していることから、営業を必要としないWebサイトを利用した商品の販売と商材の絞込みを行なった。
新商品の開発に向けて、補助金の申請書類の書き方や、別の新商品の開発支援について相談するため、当拠点へと相談に。しかし、支援制度の紹介や、それにかかる申請書の書き方のアドバイスを行っている中、従業員の退職や売上げの減少などが続き、資金繰りが悪化した。また、辞職した従業員が退職時に当社の納入価格を他の業者に漏らしてしまい、主力であった建設資材の卸業の利益が見込めなくなるなどの問題も発生した。
結果、商品開発の相談のみならず、経営改善についても当拠点でサポートすることとなった。
担当コーディネーター(以下CO)は、主力であった建設資材の卸業の利益がほぼ見込めなくなったことから、売上げではなく利益の出ている事業を分析することから始めた。創業したての小規模な卸売業という特徴から、利益率の低さが課題であったが、小規模の工事や機械類、自社開発商品が利益に貢献していることが判明した。
また、経営を改善するための経営資源が少ないため、遊休資産の売却等の手段が取れないことから、利益率を向上させることと経費の節減を行うことで改善していけるのではないかと考えた。経費の節減に関しては、従業員が退職し資材のストックも必要なくなったことから、事務所への経費を抑えるための地代家賃、従業員が使用していた配送用の軽トラック、社労士への顧問料等、事業を行う上で現在必要のない経費を整理し、明確にしていった。
COが、課題の洗い出しの結果に基づき、今後、強化すべき事業を相談者とともに検討した。中でも、建設資材は小口商品の多頻度配送を考えると利益が出ておらず、相談者自らが配送することにより、営業の機会を損失していることを伝え、定期的に販売でき配送せずに郵送で対応できる商材を探すよう提案した。その中でも、定期的に安定した売上げが見込める「ストック型」商材を探すことが望ましいとアドバイスを行った。また、経費の節減に関して、現時点で必要のない経費項目の洗い出しを行い、経費の節減案について対策を考え実行するよう提案した。
これを受け相談者は、営業の必要のないWebサイトを利用した商品の販売を実施し、定期的に売り上げが上がる商材の選定と売り込みに注力した。さらに、COと定期的に面談を行うことで考えの整理や、相談ができ「いつまでに何をする」といった具体的なマイルストーンの設定を行い経営の改善に取り組んだ。
その結果として、創業以来の黒字化に成功し、29年8月以降はリスケを解消し元本返済を開始した。商品開発の支援を行いながらも「なぜ商品開発が必要と考えたのか」というCOとの議論を通して、本来の課題が「経営改善」であると明確になっていったことが、事業を改善していくことにつながったと相談者は語った。
担当COは、「創業したての小規模な卸売業という特徴から利益率の低さが課題だった。利益率を向上させることと、経費の節減を地道に行う事で改善を行いました。」と、小規模事業者ならではの経営改善のポイントを振り返った。