老舗そば屋が数字に基づく自社分析を経て、売上170%アップ
江戸時代から続く老舗そば屋に必要だったのは、自らの強みを詳細に認識し、それを活かし切ることだった。 単価と利益率の分析をもとに、セットメニュー重視の方向性を提案。店主も驚く大幅な売上増を達成した。
代表者:今 昇一郎(こん しょういちろう)
住 所:秋田県雄勝郡羽後町西馬音内字本町90
連絡先:0183-62-0669
文政元年から代々受け継いできた「弥助そばや」。現代表は6代目にあたる。お店は町の中心部に位置し、県内外のそば好きの顧客の来店や、地域の事業所や会合の宴会場としての需要から、かつては多くの売上げがあった。しかし近年は宴会が減少し、その宴会でも昔ほどお酒が消費されなくなり、売上げが減少していた。
そこで相談者が資金繰りと収益の改善策についてメインバンクの支店長に相談したところ、支店長は経営面での具体的なアドバイスが必要と考え、当拠点のことを紹介、来訪相談に至った。
対応したコーディネーター(以下CO)はまず、相談者の営業内容や商品の特徴、価格、顧客層、現状や事業者の想いなどについて、丁寧に確認していった。店舗営業の他にも、出前や弁当などの売上げがあることも把握し、それぞれについて細かい分析を行うことにした。
その結果、老舗のそば屋として日本全国からファンが訪れることや、地域住民から親しまれているという多くの強みがある一方で、それを活かし切り、利益を確保する体制が整っていない現状が明らかになった。
たとえば売上げた商品について毎日の記録はとっていたが、それを集計して経営指標として活かすことをしていなかった。またメニューごとの原価の計算も行っておらずどんぶり勘定であった。さらにはメニュー表でオススメ商品が見にくいなど、改善点が多くあげられた。
そこでまずは店舗営業、出前、宴会、仕出し弁当それぞれでの売れ筋を把握するよう提案。さらに各メニューの原価を算出し、どのメニューの利益率が高いのかを把握するよう促した。そのうえで原価率を下げる工夫と、利益率の高いメニューに力を入れることをアドバイスした。
とくに、売上げの大きな割合を占める店舗売上の内訳を調べたところ、そばの単品商品が売れ筋1位であったが、単価、利益率共に低いことがわかった。そこで単価と利益率の高い売れ筋4位のセットメニューをオススメ商品として、力を入れることに決定。デザインを得意分野とする当拠点のCOとともに見やすいメニュー表の作成をアドバイスした。またオススメ商品のみをA4版に大きく写真で表示し、ラミネートして各テーブルに置くようにした。
改革を実施した平成28年5月から、売れ筋1位がセットメニューに変わった。徐々に売上げが伸び、7月には前年同月比170%増という数字を達成することができた。
単価、利益率ともに高い商品が売れ筋1位になったことで、売上げの増加に伴って利益も上がるようになり、資金繰りも改善することができた。
相談者自身もこの結果に驚き、以前と比べても積極的かつ前向きな姿勢となった。さらなる原価削減への試行錯誤や、売上拡大にも取り組み始めた。
創業200周年を目前に相談者は「第二のヒットメニュー開発に向けて、取り組みたい」と語った。