業態変更で廃業の窮地を脱し、売上高3倍を達成
居酒屋を経営する相談者。黒字化に向け取組もうとした矢先、店舗を移転しなくてはならない状況に追い込まれ、廃業の窮地に。しかし、その人柄に支援者が現れ移転に成功。居酒屋から「お酒も飲めるステーキハウス」に業態変更し売上拡大を目指す。
居酒屋を経営する相談者は大手弁当チェーン店の責任者や外食店舗の立ち上げ責任者等の豊富な経験を持つ。当店は接客サービスやメニューを全てマニュアル化することにより顧客に均一の満足を提供。記念日、ウエディング等への企画イベントも利用者に好評であったものの、立地の問題から、売上高が開業時から目標を下回っていた。全国的な消費者の居酒屋離れ、食の安全・安心を揺るがす事件・事象の頻発や道路交通法の改正による飲酒運転の厳罰化なども経営に大きく影響。雇用の整理、オペレーションの効率化による収益改善を試みたが、根本的な解決に繋がらず、優れた経営手腕があっても、集客力の低下に歯止めをかけるのは容易ではなかった。
そのような中で、一昨年から始めたグラム売りのステーキメニューが盛況。ステーキをきっかけに収益構造の改善と夜間の集客増加を図りたいとの思いから、当拠点と連携している長崎県信用保証協会、九州ひぜん信用金庫に相談。それぞれの立場で相談者を支援した。
対応したコーディネーター(以下CO)は、相談者から開業に至った経緯、経営状況、将来の目標などをじっくりと確認していった。まず、利用者は個人客が多く、立地的に移動手段が車に限定されることから、利用者数の伸びには限界があることが分かった。また、店舗の外観や看板から連想するサービスと提供するサービスにギャップがあること、資金繰りや設備の更新の資金を確保するために、早期に黒字化していかねばならないという課題が明確になり、早急に収益改善を図る方向性を打ち出した。
今後の方向性が定まった矢先、家主の意向で店舗を移転せざるを得なくなり、廃業の窮地に陥った。一時は相談者も移転費用もなく絶望感に苛まれたが、誰からでも好かれる人柄に応援する支援者が現れたことから、実現性が高い計画を講じられれば金融機関からの新たな資金援助の可能性もあると判断。相談者と資金を確保するための方策を検討し、取り組んでいくこととなった。
移転候補先は、立地と店舗の条件を重視した。立地では、前店で好評だったステーキ専門店として差別化が図りやすい焼肉店が多く出店する繁華街から空港までのエリアに限定。店舗では居抜きに近い物件、従業員を効率的に配置できる広さ、収益に見合った家賃などを条件に選定。条件に合いそうな店舗をCOと一緒に回った結果、空港近くの飲食店等の複合施設に理想の空き店舗が見つかった。
次に新店舗の方向性として、近隣の飲食店の客層と価格帯を調査したうえで、「ステーキが食べられる居酒屋」から「お酒も飲めるステーキハウス」にし専門性を持たせるともに、前店舗の経験を活かし、業態と店名、外観の整合性のある店を目指すことにした。店舗名・店舗外観のアドバイスを当拠点の他のCOが担当した。過少な運転資金で最大限に効果を高めるために、メニュー数は大胆に絞り込んだ。
九州ひぜん信用金庫の信用貸付による支援により追加融資も実現し、新店舗で事業を再開。ステーキ専門店に業態を変化させた店舗戦略が功を奏し、売上高は3倍を達成。日中は主婦・サラリーマン、夜間は帰り道のビジネスマン・OL・ファミリー客等の利用があるなど、昼夜ともに予定していた稼働率を上回る盛況ぶりだ。原価が高いステーキ肉だが、優れたオペレーション技術で、適正な人件費を維持している。右腕となる社員も育ってきており、接客技術なども安定してきたことから、今後は広報宣伝にも力を入れ、売上げをさらに伸ばしたい意向である。今回の改善の取り組みによって「計画的に実行していくことの重要性を痛感した」と語る相談者。さらなる業容拡大に向けた努力を続けている。