値上げ取引先・項目を絞り、限られた人的資源で価格交渉し収益改善
事業者は福島県内地区大手の農畜水産物卸売業。競合2社と当事業者で地元主要スーパー3社を棲み分けしているが、当事業者の取引先のスーパー不振、管内の人口減少による総需要の減少、コロナ禍などにより売上・利益・利益率が減少している。取引金融機関、地元商工会議所より、事業計画・行動計画の策定と策定後の伴走支援について当拠点に相談持ち込みとなったものである。
住 所:非公開
相談者は、地元大手で老舗の農畜水産物卸売業であるが、人口減少、販売先である地元小売店の衰退、取引先スーパーの売上不振、そしてコロナ禍が追い打ちをかける形で売上収益ともに減少。取引金融機関と地元商工会議所の助言により当拠点を紹介され今回の相談に至ったものである。当拠点では①事業内容の分析、②事業計画・行動計画の策定支援、③計画策定後の実行支援、④財務情報の開示が受けられることから、よろず支援伴走支援事業で対応した。
COは、事業計画作成に当たりSWOT分析・ファイブフォース分析・PEST分析などを行いながら、事業者の置かれている状況から打ち手を考え、事業計画・行動計画の策定を支援した。行動計画には、①新規取引先の確保と営業管理、②既存取引先に対する値上げ交渉とその管理の他、合計7項目にわたる。しかし、実行計画に対応する人的資源が不足している現実があり、シェア奪取等には人員を割けない状況にあった。COは、①興信所等から情報を取得し、競合の2社が当社に比べ高い粗利率を確保していること、②主要取引先別×商品カテゴリー別の売上利益のマトリックス77品目(主要7取引先×商品カテゴリー11)を売上額・粗利率・粗利額を整理している中で、売上上位13品目(77品目の上位20%)が売上の80%を占めることに気が付いた。
COは、売上の80%を占める売上上位の20%に相当する13品目を対象に限られた人員を投入することを提案。社長の納得を得て、年末商戦に向け具体的な行動に移していくことになった。COは、対象品目に対応する担当者について組織図を基にヒアリングをおこなった。営業に不慣れな従業員がそれなりのボリュームがある品目を担当していたことに気付き、部長などの役職者が価格交渉をフォローすることを提案した。12月も中旬に差し掛かる中で、営業担当従業員は長年のデフレに慣れ、価格交渉に慣れていなかったものの、社長の指示のもと目標利益率(調査した競合の利益率と同等)を設定し、品目を絞り込み卸売価格交渉を行った。
対象品目(77品目の内13品目)を絞った価格交渉が功を奏し、12月の売上と利益率が前年同月を上回った。この取組は、これまで交渉ができないと思い込んでいた従業員の意識の変化をもたらすものとなった。今後は、全品目に対し価格交渉を行うことにより、更なる売上の増加と利益の確保を進めていく。
定石通りの分析・事業計画策定・行動計画の策定のみではうまくいかなかった事例。今回のポイントは、①調査により競合の利益率が相談者を上回っていたことが確認できたこと、②人的資源に制限があるがゆえに目標を絞り込まざるを得ず、結果的に集中して価格交渉ができたことが挙げられる。どうしたら、相談者の経営資源で最大限の効果が達成できるか、検討を重ねた。
地元需要が減少する中、新規取引先の確保で収益を確保しようとすると、必要な売上が膨大なものとなり、現実的ではないと感じていました。そうした中、競合の粗利率分析、品目別売上・利益の分析により、集中すべきところが見えてきて、12月単月ではありますが、売上・利益ともに前年を上回ることができました。