家計と経営の「見える化」を踏まえて、 どんぶり勘定からの脱却を果たし、 資金繰りを安定化 | よろず支援拠点全国本部

TOP全国の支援事例家計と経営の「見える化」を踏まえて、 どんぶり勘定からの脱却を果たし、 資金繰りを安定化

家計と経営の「見える化」を踏まえて、 どんぶり勘定からの脱却を果たし、 資金繰りを安定化

相談者は製造業での勤務を経て、平成30年2月にセブンイレブンのフランチャイズ(以下、FC)店を独立開業し、妻と二人三脚で経営している。同店の立地は高齢者の多い成熟した住宅街で、近年は共働き世帯が増加している。また近くに幹線道路があるため、大型トラックも駐車できる広い駐車場を完備している。主要顧客は、近隣住民や学生など。

公開日: / 都道府県:熊本県 業種:小売 課題: 経営改善・事業再生

セブンイレブン 八代宮地町店

代表者:松村 光明(まつむら みつあき)
住 所:〒866-0805 熊本県八代市宮地町字二反田2047
連絡先:0965-35-0677

相談者は製造業での勤務を経て、平成30年2月にセブンイレブンのフランチャイズ(以下、FC)店を独立開業し、妻と二人三脚で経営している。同店の立地は高齢者の多い成熟した住宅街で、近年は共働き世帯が増加している。また近くに幹線道路があるため、大型トラックも駐車できる広い駐車場を完備している。主要顧客は、近隣住民や学生など。

公開日:
都道府県:熊本県/業種:小売/課題:経営改善・事業再生

セブンイレブン 八代宮地町店

代表者:松村 光明(まつむら みつあき)
住 所:〒866-0805 熊本県八代市宮地町字二反田2047
連絡先:0965-35-0677

目次

  1. 相談のきっかけ
    「貯金を取り崩す事態を何とかしたい」と拠点に相談
  2. 課題把握・設定
    キャッシュアウトの真因は何かをまず突き詰め
  3. 課題解決に向けた支援内容
    攻めと守りの両輪による経営で収支の改善を促進
  4. 支援の成果
    小さな成功体験の積み重ねで、資金繰りの安定を実現

相談のきっかけ
「貯金を取り崩す事態を何とかしたい」と拠点に相談

夫婦で勇んで独立開業したものの、手持ち資金がどんどん減っていく現実に直面

妻がコンビニエンスストアに勤めていた縁で、FC本部から新たな出店の話を聞きつけ、夫婦が相談した結果、夫である相談者が会社を辞めて、独立開業を決意した。FC本部の支援を受けて経営に乗り出したものの、夫婦ともに自営業の経験がなく、収益や労務の管理で想像以上に苦労することとなった。特に店舗運営を担うスタッフの確保や教育が思うようにいかなかった。また、売上増をめざして仕入れを増やしても、売れ残りを廃棄せざるを得ないことが度々生じて、利益を損なう事態となった。一方、夫婦は三人の子供を抱えており、開業資金に加えて、教育ローンや個人ローンなどの借入返済が増えていた。そのような状況での開業だったことから、次第に自転車操業に陥り始め、会社勤めで得た退職金などの貯金を取り崩す経営が続いていた。危機感が強まるものの、打つ手が見つからず不安だけが募っていった。その際、金融機関の支店担当者からの紹介により、同支店で毎月開催している、当拠点の経営相談会に参加した。

課題把握・設定
キャッシュアウトの真因は何かをまず突き詰め

毎月30万円の赤字経営を解消するため、事業と家計の分離と「見える化」に着手

CCO補佐がヒアリングした結果、開業後、売上は順調に伸びているものの、キャッシュの増加につながらない経営実体が浮き彫りとなった。加えて、家計における教育費の支出増や個人借入の返済などにより資金繰りが悪化し、2年前の初回相談時点では毎月の資金不足額が30万円を超え、抜本的な改善が急務であった。そこで、CCO補佐は資金繰りの改善に向けて、事業収支と家計収支の分離を優先課題として設定した。その理由として、単に売上を伸ばすだけの取組では抜本的な解決には至らず、事業および家計の両面で収支を「見える化」するとともに、資金繰りの改善が必須であると判断した。具体的な取組として、それぞれに資金繰り表の作成を行い、家計と事業の収入と支出の目標設定、毎月の実績管理、検証、PDCA管理を相談者自らが実施できる仕組みを構築し、家計と事業経営の「見える化」をめざした。そして事業資金に関しては、金融機関の担当者とともに返済計画の見直し変更を進めた。さらに、収益構造を改善するため、来店客増加、廃棄ロス削減、利益率の高い商品の販売を喫緊の課題とし、安定的な家計収入確保のための事業収益向上をめざした。

課題解決に向けた支援内容
攻めと守りの両輪による経営で収支の改善を促進

家計および事業における支出を減らす一方で、売上増に向けた販売促進策を強化

COはまず、毎月の家計支出を必要最小限の支出に抑制するとともに、家計の中期的なライフプランを作成してもらい、ライフイベントに沿った教育費などの中期的な資金繰り計画の作成を支援した。また、家計を安定させるための事業収益改善に向けては、立地の点から集客力が弱いことへの対策を検討した。収益性の低さも課題であったため、商品ごと、陳列棚ごとの利益貢献度分析による粗利改善およびロス削減に取り組んだ。具体的には、FC本部の了解および協力も得て、来店者数を増やすために、働く女性や高齢者を中心として地域住民に向けて、商品案内と利便性周知に努めた。中でも、時短料理に役立つ冷凍食品の店内ポップによる販売強化、高齢による買物困難者宅への配達などの宣伝に注力した。加えて、クラフトビールやオーガニック商品など独自商品の品揃えを通じて、他店との差別化を図った。このような改善策を着実に進める一方、当拠点と金融機関が密接に連携して、経営改善の進捗状況を見据えつつ、借入金の借換えと財務改善のための融資検討を進めていった。

支援の成果
小さな成功体験の積み重ねで、資金繰りの安定を実現

地域から愛される店を追求し続けることで、事業者としてさらなる飛躍をめざす

約2年間にわたる継続的な支援のもとで経営改善を実行した結果、コロナ禍という厳しい時期にありながら、家計支出の削減と粗利改善の両方を実現した。利益減 商品陳列を考案中の松村さんの一因であった食材ロスは、取り組み前の23%削減を果たし、販売管理費の4%削減につながった。事業収益は138%増となったことで、将来の資金繰りに対する見通しの妥当性を評価され、メインバンクからの金融支援を受けたことで資金繰りの安定につながった。販売促進面では、新聞チラシや店内ポップ、商品陳列の改善などが奏功し、従来馴染みのなかった顧客の来店を促すことに成功。さらに、相談者夫婦の熱意はスタッフ一人ひとりに次第に伝わり、全店を挙げて売上向上を図るまでになった。その結果、FC本部主導の重点商品などのフェアで売上が増加。特に、揚物は前年比120%増で地域内76店舗中6位、メロンパンでは南九州のFC店で1位を獲得した。小さな成功体験の積み重ねが結果として経営改善につながっている。収支が好転してきた中で、FC本部の了解を得た上で、地域に求められる商品の仕入れ販売を行うなど、地元に愛される店づくりを加速させている。

事例を振り返って

相談者は経営に不慣れだったことから、金融機関と当拠点のチーム支援により、会計、労務、仕入、販売、広告宣伝など、経営全般への理解促進に努めました。ご夫婦が主体的に取り組むべきことを洗い出して、実行してもらいました。併せて、毎月の相談会で実行と検証を繰り返しながら改善を進めました。特に事業と家計の両面で収支を「見える化」して、無駄な支出を極力抑えた点が改善につながりました。一方、販売促進では、FC本部の制約があるものの、フェアに合わせた告知強化と許容される独自策を取り入れ、実家の新聞販売店に協力いただいて、新聞チラシなどによる地域内での認知度向上に注力したことが成果につながっていきました。

相談者の声

開業当初、がんばったにもかかわらず、資金だけが減っていくことに不安しかありませんでした。よろず支援拠点で相談を重ねるにつれて、家計と事業の収益を分離して管理することの重要性を実感しました。また、販売促進に関して、ポップの作り方だけをみても、具体的にどのように作ればよいかを丁寧にサポートしていただいたことで、スタッフを含めて自分たちで制作ができるまでになりました。根気強くサポートしてくださった、 CCO、COの方々、銀行の担当者様には本当に感謝しかありません。今後、地域のお客様にとって、単に距離が近くて便利な店にとどまらず、「心の距離が近い店」をめざし、業績のさらなる向上をめざしてまいります。

支援した拠点

熊本県よろず支援拠点

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