老舗温泉宿泊施設の固定概念を打ち破り日帰りドレスリゾートへの転換による事業再生
大仙市強首温泉郷の老舗ホテル。1964年、当時の帝国石油による天然ガスの試掘の際に温泉が湧出。旧西仙北町が温泉を安定供給するという条件のもと施設事業者を募集し、その一つとして1967年、伊藤四郎現会長が「強首ホテル」を創業した。
代表者:代表取締役社長 伊藤 竜寛(いとう たつひろ)
住 所:〒019-2335 秋田県大仙市強首字上野台28-7
連絡先:0187-77-2211
同社は宿泊宴会やスポーツ合宿等の地域での集まり需要に対応するため、時代に合わせた大規模投資を行ってきた。団体宿泊需要が減少するにつれて、設備投資に係る維持コストが経営を圧迫、借入金の返済も厳しい状況となった。2011年、東日本大震災が発生後はさらに悪化。民間コンサルタント会社から当拠点を紹介され、相談に至った。
相談者と女将さんは、2002年頃から全国各地からドレスを収集し、お客様をドレスに着替えさせ、ヘアメイクを施した上で写真を撮るというサービスを試みていた。ドレスの数は1,000着にも及び、地元テレビなどに取りあげられ人気となっていた。一方で宿泊施設としての営業は、売上は大きいが利益率が低い。COはドレスの試着サービスをメインに据えることで、施設価値も上がると判断した。
折しも新型コロナの影響で宿泊需要が激減したため、相談者はドレスの試着サービスをメイン事業に転換することを決断。1,000着のドレスを生かすため、従来は別室に格納していたドレスを迷路のように陳列した「ドレスの森」を設営した。自撮り用背景ボードを10か所以上配置した他、売店を昭和レコードで飾り、来場者に楽しんでもらえる空間を演出。またコロナ禍を乗り切るため、給付金申請や光熱費支払対策など、資金繰り面でも支援を行った。
プレスリリースしたことで各種メディアに取り上げられ、全国的に珍しい取組と評価を得、予約が増えた。新型コロナの影響で一時営業を休止したものの、6月中旬の営業再開時には、コロナ対策として完全貸切予約制にしたこともあり、全国TV局で再放送され、リピーターが戻ってきた。現在も季節行事に併せたレイアウト変更や、撮影スポットの集約など、継続的な改善を実施している。日本で唯一のドレスの森として、今後も集客に努めていく。
相談者は温泉旅館の営業継続の意向が強かったため、低コストの新サービスに抵抗があった。当初、団体客利用の際は移動撤去ができる改装を折衷案としたが、コロナ対策がきっかけで、宿泊営業の継続を断念する覚悟が決まった。
ここまで真摯にサポートしていただけるのかという驚きもあり、今回のコロナのような甚大な影響のなかでも心が折れることなくこられたことに感謝の言葉がつきません。よろず支援拠点のサポートがなければ、経営の継続は早々に諦めていたと思います。