看板商品「汐ぶり」の自社生産体制を確立
製造コスト20%減、売上は前年比130%を達成
看板商品である「汐ぶり」は、原料となるぶりの下処理から、塩漬け、乾燥までの一連の加工を地元鮮魚販売店の職人に委託していた。しかし、職人の高齢化と後継者不在のため、今後の安定的な生産が難しくなることが予想された。そこで、職人の技術を継承し、自社での一貫製造を検討するも、職人は経験と勘で作業していたため製造工程のマニュアル化に難航。そのような折、相談者は当拠点主催の販路開拓セミナーに参加。マニュアル化に向けた相談を具体的にしていきたいと食品分野専門のCoに相談した。
相談者は当初、職人から加工の知見と技術についてアドバイスを求めていた。しかし、Coがヒアリングした結果、製造工程のマニュアル化はもとより、自社工場での製造に向けて工場の整備や衛生管理体制が整っていないことが判明。そこでCoは、相談者の課題を「製造工程のマニュアル化」と、一貫製造体制の確立に向け「衛生管理体制の確立」、「工場等の生産体制の確立」の3つとし、同時並行的に取り組む必要があると分析した。
Coは、マニュアルに数値まで落とし込むため、職人へのヒアリングのポイントをアドバイス。原料入荷から加工、保存、出荷までの一連の製造工程ごとのチェック項目、測定項目を落とし込むよう助言した。特に、製品の食感、保存性にも大きく影響する工程は、時間管理も容易にできるよう具体的な作業時間まで含めて設定することを提案。
さらに、衛生管理体制の確立に向けては、企業価値の向上にも寄与できるよう、衛生管理の国際標準であるHACCP導入を提案。あわせて、衛生管理のマニュアルを再編し、従業員に徹底するよう提案した。生産体制の確立に向けては、HACCP導入と相談者が受けている食品の営業許可に対応したレイアウトにできるようアドバイス。その他、製造ロットにより味と食感のバラつきが出ないよう、試食評価を行い、商品改良に関する支援も行った。
熟練職人の経験と勘に基づいていた「汐ぶり」の製造技術のマニュアル化が実現。衛生管理面ではHACCPシステムを踏まえた体制が整い、それにあわせた生産体制も確立。悲願であった自社での安定・安全の一貫生産が実現した。外注から自社生産に切り替わったことにより製造コストは2割減に、売上は前年比130%に到達する結果となった。最近では全国放送されるTV番組の富山県特集で「汐ぶり」が取り上げられるなど、認知度も高まりネットでの注文も増え続けている。