経営危機に陥った老舗旅館が経営資源とITを活かした改革で黒字化を達成 | よろず支援拠点全国本部

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経営危機に陥った老舗旅館が経営資源とITを活かした改革で黒字化を達成

宿泊客の激減で、経営難へと追い込まれた国民宿舎「新和歌ロッジ」。 老朽化が進む施設や、観光地としての新和歌浦の人気の低迷。 苦しい状況の中で、経営再建に向けた支援が始まる。

公開日: / 都道府県:和歌山県 業種:宿泊・飲食 課題: 事業承継 経営改善・事業再生

大瀬株式会社(宿舎・新和歌ロッジ)

代表者:大瀬 盛正(おおせ もりまさ)
住 所:和歌山県和歌山市新和歌浦2-3
連絡先:073-444-9000

宿泊客の激減で、経営難へと追い込まれた国民宿舎「新和歌ロッジ」。 老朽化が進む施設や、観光地としての新和歌浦の人気の低迷。 苦しい状況の中で、経営再建に向けた支援が始まる。

公開日:
都道府県:和歌山県/業種:宿泊・飲食/課題:事業承継 経営改善・事業再生

大瀬株式会社(宿舎・新和歌ロッジ)

代表者:大瀬 盛正(おおせ もりまさ)
住 所:和歌山県和歌山市新和歌浦2-3
電 話:073-444-9000

井上 禎
INOUE TADASHI

和歌山県よろず支援拠点

PROFILE

チーフコーディネーター

井上 禎 INOUE TADASHI

和歌山県よろず支援拠点

PROFILE

チーフコーディネーター

目次

  1. 宿泊客の激減で経営危機に陥る
  2. 売上げの確保を喫緊の目標として設定
  3. 専門家派遣制度を活用し、立て直しへ
  4. 目に見えた効果が現れ 立て直しに手応え

宿泊客の激減で経営危機に陥る

眼前に瀬戸内海の雄大な景色が広がる「新和歌ロッジ」は、国民宿舎形式で約50年営業を続けてきた。
旅館が立地する新和歌浦は、かつて万葉集にも詠まれた風光明媚な観光地として賑わいを見せてきたが、平成に入り観光客は激減。15軒ほどあった旅館も現在では半減してしまった。
「新和歌ロッジ」も、観光客の減少に施設の老朽化も重なり、年々売上げが減少。数年にわたり営業赤字が続く中で、板場を切り盛りする社員を解雇し、二代目社長である大瀬盛正さん自身が包丁を握らざるをえない状況にまで追い込まれていた。
経費削減、DMの発送による集客を図ってはいたものの「暗闇の中で、目隠しをされた状況だった」と大瀬さんが振り返るように、経営を立て直す打開策は見つけられずにいた。
そんな折、女将が和歌山のタウン紙で当拠点の開設セミナーが開催されることを知り、平成26年6月、大瀬さんと共にセミナーに参加。セミナー終了後に、当拠点のチーフコーディネーターである井上さんに、支援を求めたことをきっかけに当拠点による支援がスタートした。

売上げの確保を喫緊の目標として設定

支援の要請を受けた井上さんは、本案件の担当者に指名した当拠点のコーディネーターである矢埜さんと共に「新和歌ロッジ」に足を運んだ。実際の施設や決算書を確認した上で、来館する顧客の層などに対するヒアリングを行った。矢埜さんは第一印象として「施設の老朽化を踏まえ、集客には大分苦労しているだろうと思った。しかし、大瀬さんご夫妻の表情から、経営の立て直しへのやる気を感じ取っていたため、なんとかなるだろう」と感じていた。
数回にわたるヒアリングを経て、施設の修繕費に必要な資金もなく、すでに借入のある金融機関からの追加融資も難しいことから、まずは宿泊客を増やし、売上げを伸ばすことを喫緊の目標として設定した。
その上で、国民宿舎として「気楽に、安く泊まってもらう」ことへのこだわりが強く、宿泊プラン・サービスの差別化・工夫が不十分であること、予約サイトの活用が不十分でネットからの予約が少なく、IT化が進んでいないことなどを売上減少の主な要因と分析した。
矢埜さんは、老朽化という問題があるのは現実だが、一方で大瀬さんが「地元の新鮮な食材を安価で出している」と自信を持つクエ料理などの強みもあり、集客活動をITを活用して積極的に行うことにより売上増は達成可能だと考えていたのだ。

専門家派遣制度を活用し、立て直しへ

課題を整理した上で矢埜さんは、宿泊業支援の専門家のアドバイスを受けることを提案。専門家派遣制度を活用し、専門家の助言を受けながら予約システム・サポート会社を紹介してもらい、効果的な集客や管理が可能な予約システムを導入することを提案した。
経営危機に陥る中で、システムの構築はそれなりの費用を要し、リスクを伴う決断でもあったが、大瀬さんは「とにかく現状を変えるために」との想いで、導入に踏み切った。その背景には「とにかく一緒に頑張ってくれた」という矢埜さんへの信頼があったが、効果については当初は半信半疑であったという。
これを機に段階的に国内外10以上の予約サイトへ登録し、ネットからの予約を増やすことに注力。システムの機能を活かし、日々の予約状況・季節等を考慮し、宿泊プラン内容・料金の変更も小まめに行い、合わせて自社のホームページも大幅にリニューアルし、ホームページからの予約増も狙うことにした。
また、予約システム会社のノウハウも活用し、自慢のクエ料理を押したプランや眼前に広がる和歌浦港での釣り体験をセットにしたプランなど、宿泊プランの大幅な拡充を図った。
さらに、信用保証協会の専門家派遣制度も活用し、経営改善計画の策定支援を依頼した上で、金融機関に対し、施設の改修のための追加融資の申込みを行った。

目に見えた効果が現れ 立て直しに手応え

予約システム導入の効果は、顕著に現れた。なんとシステム導入の翌朝には、予約を知らせるFAXの束が届いていたのだ。
女将さんは「FAXの束を手に主人とハイタッチをしたのを覚えている」と当時を振り返り、笑みをこぼす。ネット経由での予約が、導入前の5~6倍に増加した月もあったそうだ。
平成27年に開催された和歌山国体の需要も一因ではあるが、結果として、支援開始後2年間で売上げが約2倍と増加し、経常利益の黒字化を達成した。特にネット経由での予約が支援前の3倍と、売上増加額の65%を占めるまでになり、リニューアルしたホームページからの電話予約も大きく増えているそうだ。
また、経営改善計画を策定した上で申込んだ追加融資も無事受けることができ、防水工事や和式トイレの洋式化など、施設の改修に取り組むことができることになった。
大瀬さんは「相談したことで、一緒に考えてくれる人ができたのが嬉しかった。どちらを向いて何すれば良いかに気付かせて頂いたことが何より有難いと思っている」と、支援を振り返った。
ここで、もう一つ嬉しいニュースとなったのが、今まで県外で働いていた大瀬さんのご子息、太郎さんが営業担当の社員として入社することになったのだ。太郎さんは「旅館業を変えたいという想いが強くある。成功例を自分の手で出していきたい」と、意気込みは十分。現在閉鎖している別館を、ゲストハウスとして活用する構想も進行中だという。
「新和歌ロッジ」は、難所を抜け経営の安定化に向かって一歩を踏み出した。支援を担当した矢埜さんは「この二年間で、黒字化は達成した。けれども、まだ債務はあるので、今後は集客や売上げをさらに増やし、黒字を継続できる体制にしていかなくてはならない」と、気を引き締める。
今後は、最盛期の活気を失ってしまった「新和歌浦」にいかに活気を取り戻していくか、地域としての取組みも視野に入れ、「新和歌ロッジ」のさらなる挑戦を後押ししていく姿勢を見せた。

支援の流れ
01
観光客の減少に施設の老朽化も重なり、年々売上げが減少。経営難に陥っていた
02
強みを活かし、ITを活用して集客を強化することで売上増は達成可能と判断
03
専門家派遣制度を活用し、予約システムを導入。経営改善計画を策定し、追加融資の申込みを行う
04
二年間で売上げが約2倍に。経常利益の黒字化も達成し、融資も受けられ、施設の改修に着手
支援した拠点

和歌山県よろず支援拠点

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