水産加工分野での成功と挫折 そして、再起へ | 中小企業・小規模事業者のための経営相談所 よろず支援拠点

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水産加工分野での成功と挫折 そして、再起へ

公開日: / 都道府県:高知県 業種:製造 課題: 経営改善・事業再生

明弘食品株式会社

公開日:
都道府県:高知県/業種:製造/課題:経営改善・事業再生

明弘食品株式会社

代表者:
住 所:

目次

  1. 水産加工分野で脚光を浴びるも失意
  2. アイデアはあるがひと・もの・かねの調達に課題
  3. 信頼を構築する取組みを推進
  4. 世界をまたにかける一大プロジェクトへ

水産加工分野で脚光を浴びるも失意

一本釣りカツオで知られる漁師町、土佐佐賀。明神さんは土佐佐賀で培った「藁焼き鰹たたき」ビジネスのノウハウを活かし、1996年に水産加工販売の「土佐鰹水産株式会社」を創業し、静岡県大井川町に加工工場を建設、米国留学から帰ってきた息子の専務とともに、カツオのたたきを主体にピーク時は50億円近い年商を上げていた。しかし、2010年、不慮の事故で専務を亡くしたうえに、気仙沼の缶詰工場と提携し「MSC漁業認証鰹」の海外展開を目指していた計画が、翌年の東日本大震災で破綻。「なぜこんな目に遭わなくてはいけないんだ」と失意の中、2012年5月には会社も倒産してしまう。
失った気力が戻ることはなく、地元高知に帰ったが、もう一度再起を目指せと友人に勧められる。激励の言葉を胸に、「孫や家族の生活もあるし、何より自分自身がこのままでは終われない」と心機一転、再チャレンジに向けて歩み始めた明神さん。個人で所有していた特許「カツオガーリックステーキの製法」を活かし、実家のガレージを活用する形で、夫婦でチキン(四万十鶏)を使ったガーリックステーキを製造、販売する「明弘食品」を2013年に創業した。
事業を立ち上げると次第に意欲は高まり、新事業企画も思いつくものの、企業を倒産させてしまった過去が、重くのしかかる。「倒産という憂き目に遭い、話を聴いてくれる機関は少なかった」とそう語る明神さんから、事業のアイディアはあるものの実現できない当時の悔しい想いが感じ取れた。
そんな苦しい状況の中、2014年に当拠点が設置され、土佐鰹水産時代の工場建設の際に関係のあった小松チーフコーディネーター(以下CCO)に今の状況を話にいったところから支援は始まった。再起のための様々なプロジェクト案について何度も協議し、意見を求めるために近くで用があるついでにフラッと当拠点を訪れたりもした。「電話なども含めると今までで100回近くは相談してもらっているのではないか」と小松CCOは笑いながら当時の思い出を語る。じっくりと明神さんの想いをヒアリングし、今後の支援の方向性を二人で考え始めた。

アイデアはあるがひと・もの・かねの調達に課題

「藁焼き鰹たたき」で全国展開を図り、年商50億円のビジネスを作る手腕を持っているだけあり、明神さんからはビジネスのアイデアが湧き出ていた。しかし、構想する水産加工プロジェクトは、一定の「ひと・もの・かね」の経営資源が不可欠。しかし、当時の状態は、企業を倒産させた経営者としての評価から、なかなか調達は難しい状況。
そこで、小松CCOはまずは信頼性を回復することから始めていく必要があると判断、支援方針を定めた。まずは、明神さん自身が公的機関を何度も訪ね、ちょっとした応援を引き出していくこと。公的機関から支援を受けたという事実を積み重ねることで実績ができ、大きな支援を引き出す足がかりになると考えたのだ。
そういう活動をしているなか、JETROから明神さんに、国際特許を出願した「ガーリックステーキ」に関しベトナムの水産企業から話を聞きたいがベトナムに来てくれないか、との依頼が舞い込む。
早速明神さんは、ベトナムを訪ね、パンガシウス(ベトナム産ナマズ)の養殖事業について話しを伺った。そこで、数百万tも養殖されながらも、付加価値が低いままに白身魚のフィレとして海外に輸出されている現実を聞き、ビジネスチャンスを嗅ぎ取った。
「ベトナムの現場を見たら胸が高鳴った」と、明神さん。帰国するやいなや、早速ナマズ(白身魚)の情報収集に動き出す。加工・開発を行う中で、日本で50万t、EUで100万tの市場規模の需要がある「すり身」への加工技術や、「かば焼き」のアイデアを思い付き、現地企業と協議を重ね、ベトナム企業からの信頼をテコに国内で組む相手を探しだした。その製法の「国際特許出願」へと明るい材料が見えるようになっていた。
明神さんから絶えず報告、相談を受けていた小松CCOは、このビジネスに可能性と将来性を感じた。「失敗した人でも再起できるように応援していく社会になれば」という想いから、企業を倒産させた経営者という負のイメージを払拭するため、対外的な信頼性構築に最も効果がある「プレスリリース」に着目した。

信頼を構築する取組みを推進

小松CCOは、面識のある記者に同社のプレスリリースを働きかける算段をつけ、明神さんには業界紙に掲載してもらう記事作成を依頼、内容をブラッシュアップ。また、相談を受ける中で、ベトナムからコンテナでパンガシウスを輸入するにはどうしても資金が必要であることから、金融庁が各金融機関に事業性評価を求めている動きをとらえ、資金調達の可能性のある日本政策金融公庫高知支店にアプローチしようと、創業計画書づくりを提案。書面をチェックし、融資の相談に公庫に同行した。
このアドバイスを受けた明神さんは、水産加工の業界紙「みなと新聞」に記事掲載依頼。無事に記事が掲載されることとなった。これとあわせ、日本政策金融公庫に提出する書面を作成し融資の申し込みを行った。

世界をまたにかける一大プロジェクトへ

業界紙への掲載もあり、それを受けて県内の地元紙や全国紙に記事掲載の働きかけを行った結果、日本経済新聞(H28.12)、高知新聞(H29.1)、日経MJ(H29.1)朝日新聞(H29.3)に記事として「ナマズ蒲焼」が掲載された。大学機関がナマズの蒲焼に取組んでいたこともあり話題性は十分だった。
また、2017年9月に、日本政策金融公庫高知支店からの創業融資も実行され、ボトルネックになっていた資金面にも明るい兆しが見えた。この融資を受け、小松CCOは海外輸出の際に必要になる海外での知財取得のために、産業振興センターで実施している海外の輸出に必要な海外の特許出願(すり身の製造)の申請をアドバイスした結果、この支援事業の支援も受けることが決まり、これにより、大手商社とEU国際特許共同出願に向けて取り組めることになった。
明神さんは「事業を一度失敗した破産者の立場からすると、足の重くなる日々だったが、めげるたびに応援いただき心強い限りだった」と小松CCOの存在に感謝を述べると共に「一本釣りカツオ」の次は、「ベトナム産パンガシウス(ナマズ)高付加価値商品開発事業」で世界と渡り歩く意欲を燃やしていた。
現在、大手商社と連携し、ベトナム産ナマズによる蒲焼き、テリヤキ、すり身加工、海外輸出の大きなプロジェクトとなって進展中である。
支援を担当した小松CCOは、「明神さんの経営手腕をもう一度地域で役立てて欲しいとの思いで支援してきた。一方で、世の中は未だに、倒産者に対する冷たい目線があり、「事業性評価」がなされにくい現実がある。進んでは戻りの繰り返しだったが、たえず勇気づけ、未来を一緒に夢見てきたからこそ、ここまで来ることができた」と、世界に挑む明神さんを見守った。

支援の流れ
01
「企業を倒産させた経営者としての評価をされてしまう。」
02
「ちょっとの支援を引き出していきましょう。」
03
「負のイメージを払拭するプレスリリース。」
04
「ベトナムの現場を見たら胸が高鳴った。」
支援した拠点

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