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従業員、創業者の雇用が守られた 円満な垂直統合

公開日: / 都道府県:岐阜県 業種:製造 課題: 事業承継

株式会社サン東海

公開日:
都道府県:岐阜県/業種:製造/課題:事業承継

株式会社サン東海

代表者:
住 所:

目次

  1. 体力の限界から事業の終息を意識
  2. 社員の雇用を守りたい強い気持ちがある
  3. 譲受側にメリットを感じさせる説得
  4. 雇用を守る以上の結果に

体力の限界から事業の終息を意識

「何が何でも品質第一」、1つの不良品が生命を脅かすこともある。自動車部品を作る企業として、徹底した品質管理を行う株式会社サン東海(以下、同社)。社長の島さんは、現在75歳。2015年頃から体調を崩しがちで、会社の将来を考え事業承継に悩んでいた。後継者の候補として長男が居るものの、既に土木建築事業を営む経営者であり、後継者の当ては無かった。
また、自動車部品市場は国際的な価格競争から製造コストが安価な海外生産へのシフトが顕著になり、ピーク時には月90万点あった出荷数は、年々減少し現在は月45万点と半減状態にあった。
これらの経緯から、事業の終息について考えるようになったが、島さん自身が事業を終息した経験が無く、従業員の雇用、設備や建物などの処理方法などどのように対応して良いものかわからず、途方に暮れていた。熟考の末、下呂市商工課へ相談に伺ったところ、当拠点のことを紹介され来訪相談するに至った。

社員の雇用を守りたい強い気持ちがある

対応した松岡コーディネーター(以下CO)は、まずは島さんの話の腰を折ることなく、来訪に至るまでの経緯について丁寧に話を伺った。
製品の特徴や顧客層、保有設備、建物と土地の面積や権利関係、従業員の能力や年齢構成と人数、勤務年数、株主構成の他、工場の周辺環境などについても併せて丁寧に確認していった。
話しの中で、島さん自身が、終息か継続かで悩んでいる要因として、社員の雇用を何とか守りたいという想いが根底にあることを確認。異業種への転職の辛さを知っていたこともあり、極力今の環境を変えずに働き続けてもらいたいと従業員の身を案じていた。松岡COも「島さんの話しぶりから『従業員の雇用を絶対守る』という気概を感じ、支援にも自然と熱が入った。」と当時を語る。
また、島さんとしては3つの選択肢を考えていることを確認。1つ目は、「企業の誘致を図り、同社を清算。新たな事業者に建物を有効利用する形で別事業に取り組んでもらうこと」、2つ目は、「後継者を見つけ、同社の経営を託すこと」、3つ目は、「M&Aによる事業承継策として、主要顧客であるS社の関連会社と合併すること」であった。
松岡COが、岐阜県事業引継ぎ支援センターや地元金融機関、有料職業紹介事業者に問い合わせをしてみたが、企業誘致と後継者の発掘は、極めて可能性が低い状況であった。残されていたのはM&Aによる事業承継の道だ。そこで、島さんから主要顧客であるS社についてヒアリング。S社は生産拠点の分散による生産効率の悪化、物流コストの上昇がボトルネックとなり、業界での価格競争力が低下しているのではないかと分析した。また、生産拠点のある愛知・岐阜県内の有効求人倍率は近年2倍を超えており、高い製造技術を持つ同社の人材は即戦力として、ニーズは高いことが想定出来た。松岡COは、これらの分析結果から、「従業員の能力を活かした雇用の継続・確保」が可能と判断、「S社の関連会社へ生産拠点を統合し同社の従業員を転籍の上で同社を清算する」というシナリオを描いた。
このシナリオを実現する上で大きな障壁となるのは、「生産拠点の統合と同社従業員の転籍に対するS社経営陣への理解と合意形成」「従業員に対する転籍への理解と合意形成」だ。それらを打開するための次なる策を綿密に検討し始めた。

譲受側にメリットを感じさせる説得

島さんと松岡COがディスカッションを重ねた結果、S社に対して生産拠点の統廃合を提案していく方針に決定。S社に同社のプロフェッショナルな人材を転籍させることでのメリット「生産効率の向上」「物流コスト、人材育成コストの削減」をPRする作戦だ。
そこで、S社の理解を得るためにも、S社の経営陣、下呂市商工課、岐阜県事業引継ぎ支援センター、(公財)岐阜県産業経済振興センターのものづくりCOとの協議を重ねていくことを提案した。
これを受け島さんは、様々な支援機関の協力を得ながら、S社と同社の生産設備の移転、従業員の関連会社への転籍について、雇用や労働条件などの協議を重ねた。
これと並行して従業員向けの説明会を実施し、転籍について理解を得ていくことも提案。経験上、「言い方を間違えると大変なことになる」と知っていた松岡COは、経営環境の現状、従業員の雇用確保策を含む今後の方向性や解決策と、その必然性について従業員の視点から丁寧に説明するように助言を行った。
S社との協議内容を加味した社内説明会の準備を進め、一人一人の従業員に対して現状を説明するとともに、転籍についての希望を確認の上、希望しない従業員には就職支援策の提示を行うなど丁寧な対応を行った。

雇用を守る以上の結果に

こうした取組みの結果、遂にこれまでの努力が報われる日を迎えた。2017年6月6日、S社、下呂市商工課、岐阜県事業引継ぎ支援センター、松岡COが一堂に会し、協議を行った。そしてその場で、2017年12月末をもって同社を清算し、現工場は倉庫として活用。同社従業員はS社の関連企業などへの転籍について、S社と合意を得ることが出来たのだ。従業員からも既に清算・転籍について理解を得ることが出来ていたこともあり、2018年1月から滞りなく転籍先で雇用を継続出来る準備が完了した。島さんの様子を傍で見守っていた松岡COも「当初は大分疲れている印象だったが、無事成果が出てからは顔色も良くなり、背筋もシャンと伸びた。あぁ、もう大丈夫だなと感じた。」と振り返る。
しかし、この話には予想以上の結末が待っていた。現工場は閉鎖する予定で進んでいたが、好転。現工場の生産設備はそのままにS社萩原工場としてスタートをきること、また2018年2月より島さんが工場長に就任することがS社からの提案で決まったのだ。「何が何でも品質第一」と熱い想いで取り組んできたその姿勢、そして高品質な製品が高く評価された結果だ。「歯車が良い方向にまわりだすと自然と良い方向に動いていくもの。悪い流れを断ち切るよう支援した成果が出た。」と松岡CO。島さんは心機一転、想いを新たにしながらも「名前は変わっても品質は変えない」と、ものづくりへの強い想いを改めて誓った
今、中小企業の後継者問題が、大きな課題となっている。その中で注目されているのが、第三者への事業引継ぎだ。本事例のように、品質へのこだわりや従業員の技術力など、企業の資産となる価値を発見し、買い手となる企業につなぐことで親族や従業員に後継者の当てがなくとも円滑に事業を引き継ぐことができるのだ。

支援の流れ
01
「従業員には、できるだけ今と同じ環境で働き続けて欲しい。」
02
「S社は、生産拠点が分散していて、生産効率が悪化している。」
03
「不良品が出ればとことん原因を追究する。それほど品質にはこだわる。」
04
「転籍の説明は、従業員の視点に立って丁寧に。」
支援した拠点

岐阜県よろず支援拠点

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